タイトル「ミステリー小説」
「殺人事件が起きたようだな」
刑事の山田は現場に到着すると、同僚の佐藤に声をかけた。
「被害者は誰だ?」
「このマンションの住人で、小説家の高橋という男だ。妻が帰宅したら、リビングで血まみれになって倒れていたということだ」
「死因は?」
「凶器は見つかっていないが、頭部に鈍器で殴られたような傷がある。死亡推定時刻は午後三時頃だろう」
「現場に何か手がかりはあるか?」
「そう言えば、この本棚にある本が気になったんだ。高橋の作品ではなくて、他の作家のものばかりだ」
「それがどうした?」
「この本棚にある本は全部ミステリー小説なんだけど、タイトルや作者名がすべて逆さまに並べられているんだよ。不自然じゃないか?」
「確かに変だな。もしかして暗号か何かか?」
「そう思ったんだけど、どう解読すればいいのか分からないんだよね」
山田は本棚をじっと見つめた。
すると、一冊の本が他と違って正しく並べられていることに気づいた。
その本のタイトルは『逆さま殺人事件』で、作者名は『村上春樹』だった。
山田は『逆さま殺人事件』という本を手に取り、表紙を開いた。
すると、中には文字ではなく、写真が貼られていた。
写真には高橋の妻と、見覚えのある男性が抱き合っている姿が映っていた。
その男性は村上春樹だった。
「なんだこれは…」
山田は驚いた。
「どうしたんだ、山田?」
佐藤が声をかけた。
「この本には高橋の妻と村上春樹の不倫の証拠があるんだ。高橋はこの本を見つけてしまったんだろう。そして村上春樹に殺されたんだ」
「それじゃあ犯人は村上春樹か…」
「そうだ。そして彼は自分の罪を隠すために、他の本を逆さまに並べて暗号に見せかけたんだ。でも一冊だけ正しく置いてしまった。それが彼の失敗だった」
「なるほど…でもなぜ彼は自分の名前で本を出版したんだ?」
「それは彼の傲慢さだろう。彼は自分が天才的な作家であり、完璧な殺人計画を立てられると思っていたんだ。彼は自分の作品で高橋を挑発しようとしたんだ」
「そんな馬鹿な…」佐藤は呆れた。
「さあ、早く村上春樹を逮捕しよう。この小説も証拠品として持って行こう」
山田は『逆さま殺人事件』という本を持ち上げた。
その時、本から一枚の紙切れが落ちてきた。
紙切れにはこんなメッセージが書かれていた。
『おめでとうございます。あなたは私の小説に気づきましたね。でもそれで終わりではありませんよ。私はもっと面白い展開を用意していますよ。次回作『二重螺旋殺人事件』もお楽しみに』
署名:村上春樹